日別アーカイブ: 2014年11月15日

上尾市のはぎむら眼科による網膜動脈閉塞症について

網膜動脈閉塞症
網膜に血液を送っている動脈が詰まり、網膜の細胞への血流が途絶えてしまう病気です。細胞の活動に必要な酸素や栄養は、血液によって供給されていますので、血流が途絶えると、間もなくその箇所から先の細胞は死んでしまいます。
血流が途絶えることで起きる病気としては、心筋梗塞や脳梗塞がよく知られていますが、網膜がこれらの病気と同じ状態になるのが網膜動脈閉塞症で、網膜は瞳から入ってくる光の情報を感知する神経組織のため、網膜細胞が死んでしまうと光を感知できなくなり、視覚が失われてしまいます。

網膜動脈が閉塞する原因
網膜動脈が閉塞する原因は、大きく分けると三つあります。
1つ目は、網膜動脈に動脈硬化が起きて血管の内径が狭くなっている状態で、血圧の変動などをきっかけとして血栓が形成されること。
2つ目は、網膜動脈よりも心臓に近い部位の血管に動脈硬化が起きていて、なにかの拍子にその血管内の栓子(血液や脂肪などの固まり)が血管内壁から剥がれ、網膜動脈内に付着することです。
3つ目の原因は、網膜動脈に炎症や痙攣が起きたり、あるいは血液成分や血流に変化が起きて、血液の供給が途絶えることです。
三つの原因のうち最初のふたつは、ともに動脈硬化が基本にあります。ですから、動脈硬化を招きやすい高血圧や糖尿病などの病気があったり、たばこを吸う人は、網膜動脈閉塞症の危険性が高いといえます

網膜動脈閉塞症の症状とは
網膜動脈閉塞症の症状は、血管がどの部分で閉塞したかにより異なります。

網膜中心動脈閉塞症

網膜の動脈は、眼球の後方にある視神経内を通り網膜全体に広がっていて、心臓により近い側の動脈を網膜中心動脈といいます。この網膜中心動脈が詰まると、網膜全体が血液の届かない虚血(きょけつ)状態になります。網膜の細胞は光を感知できなくなり、視力は矯正視力で 0.1以下にまで低下します。

網膜動脈分枝閉塞症

網膜動脈の枝の部分が詰まる症状です。血液が届かないのは血管が閉塞した箇所から先の網膜だけで、それ以外の網膜はそれまでと同じように機能します。
自覚症状は、虚血部位に相当する視野欠損(視野が欠けること)で、上半分の網膜が障害されていれば、下半分の視野が遮られます。視力は、黄斑が正常であれば低下しません。このため、視力が 1.0もあるのに常に足元が見えない、といったことになったりします。ただし、黄斑の血流を司っている血管も閉塞すると、視力も極度に低下してしまいます。

中心動脈閉塞動脈分枝閉塞の発症の比率は、ほぼ半半です。
このふたつ以外にも、特殊なケースとして、毛様(もうよう)網膜動脈閉塞症があります。 いずれのタイプでも、大半は発症するまで自覚症状は少なく、突然、視力低下・視野欠損が起きます。ただし、ときには発症前のある時期、網膜の瞬間的な虚血によって、ほんの数秒間だけ目の前が暗く感じる一過性黒内障(こくないしょう)や軽度の頭痛、目の奥の痛みを自覚することもあります。

網膜動脈閉塞症の治療
閉塞した網膜動脈は、治療しなくてもやがて血流が再開します。しかし、網膜の神経細胞が虚血状態に耐えられる時間は、長くても1時間ほどしかありません。この時間内に動脈が再疎通しなければ、その後で血流が戻っても、もう神経細胞は機能してくれません。つまり、治療は緊急を要します。
ところが網膜動脈閉塞症は、強い痛みなどの前駆症状に乏しいため、ほとんどの人は急に目が見えなくなっても、時間を争う緊急な事態だとは認識できません。眼科受診までに数時間から数日経過してしまい、結果的に多くのケースで高度の視力障害が残ってしまいます。
この病気は眼科での救急疾患のひとつで、できる限り速やかな治療が重要です。血流を少しでも早く再開させることができれば、より高い治療効果が得られます。
治療によって、視力回復の可能性は決してゼロではなく、なかには中心動脈閉塞でも正常近くまで回復する人もいます。最終的にどの程度の視力になるかは、発症時の血管の閉塞の程度と、発症から治療開始までに要した時間の長短が決まってしまいます。



今回のアドバイス
この病気には、動脈硬化が強く関係しています。そして動脈硬化はなにも網膜動脈だけに起こっているのではなく、全身の血管でほぼ同時に進行していると考えられます。動脈硬化による病気は、狭心症・心筋梗塞・脳梗塞など、どれも生命予後を決定しかねない重大な病気です。動脈硬化を起こす高血圧や糖尿病、高脂血症などに注意し、日頃から禁煙や肥満解消、運動、ストレス発散などを心掛けましょう。
網膜動脈閉塞症についていえば、動脈硬化の全身的な管理、つまり動脈硬化を防止して動脈閉塞が起きないように予防していきましょう。