色覚異常の見え方
光の色は、波長の長さによって決まります。虹は七色といわれますが、その順序は波長が長いほうから順に、赤・橙・黄・緑・青・藍・紫です。人の目が感知できる光の波長は限られ、波長が赤より長い光(赤外線)や紫より短い光(紫外線)は、人の眼では見ることができません。
光の三原色の赤・緑・青に感受性が高い3種類の視細胞がちゃんと機能している場合、波長の長い光から短い光までバランスよく感じ取れるので、色を正確に認識できます。これに対し、視細胞の機能低下のために、感知できる光の情報が部分的に不足して、識別しにくい色が生じるのが、色覚の異常です。色覚に異常がある人のすべてがこれらの色を誤認するわけではなく、一つの色しか該当しない人もいれば、ほとんどすべてがあてはまる人もいます。また、同じ人がいつも同じように誤認するのではありません。色を誤認しやすくする要因として下記の例などが挙げられます。
対象物が小さい(色の面積が狭い)
彩度が低く、色があざやかでない
明るさが足りない(暗い)
短時間で色を判別する必要がある
見る物に対する色の先入観
疲れなどのため注意力の低下
色覚の検査
先天色覚異常の場合、色の見え方が変化することはないので、一般の病気の治療のように、定期的に検査を受ける必要はありません。しかし、色覚の異常を見つけ、それがどの程度でどういう誤認を起こしやすいかを知るためには、検査が必要です。
仮性同色表(色覚検査表)…よく知られている「石原表」のように、色のモザイクの中から数字や記号を読み取る検査です。色覚異常の有無を見つけるのに適しています。この検査は、以前は小学4年生全員を対象に行われてきましたが、平成15年度から必須の検査項目ではなくなりました。
保護者の同意を得たうえで検査を行っている自治体もあります。
パネルD-15…15色のパネルを、基準となる色に近いと思うものから順に並べていく検査です。色覚異常の程度を把握するのに適していて、生活上の実際的な問題(色誤認を起こしやすいかどうか)とよく相関した結果を得ることができます。
アノマロスコープ…色覚異常を正確に診断するための重要な検査で、色光の色合わせによって判定します。しかし機器が高価で取扱いも難しいため、あまり普及していません。
今回のアドバイス
現代医学では、先天性の色覚異常を治すことはできません。しかし、色覚異常は色の見え方が少し違うだけで、それが悪化する心配はありません。また、頻度的にもごくありふれたものです。
色覚は、その人の生き方を左右するたくさんの条件の中の一つにすぎず、色覚に異常があるからといって人生が決定づけられることはありません。色覚の異常を自分という人間を形づくる一要素として受け入れ、マイナス思考を排除することが、より充実した生活を送るコツと言えます。
色覚に異常があることがわかったなら、なるべく早めに検査を受けて、自分の色覚の“くせ”を理解しておくようにしましょう。間違えやすい色、区別がつきにくい色は、人それぞれ異なります。「くせ」を知れば、色誤認しやすい状況・注意すべきポイントがよくわかりますし、就職後に問題に気付いて転職するなどの回り道も少なくできます。色覚の異常は一つの弱点には違いないので、早くそれに気付いたほうが、後から余計な無理をしなくて済むはずです。